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創造力の欠如が生んだ「アウトレイジ」

6月12日の公開以来なかなか行けなかった「アウトレイジ」を見に行ってきたんですが気分悪くなって早退したその足で見るものじゃないわ^^;

北野監督がインタビューでも言ってましたが完全な娯楽映画に仕上がってて、話はうまく転がっていきます。そして役者もうまい!もちろん私の(笑)加瀬さんの完全なイメチェンも成功してたし、出番は少ないけど意外と塚本崇史もよかった。でもメインどころじゃないんだけど一番気になったのが柄本明さんの息子さんが組の下っ端で出てるんですけど、なんともいえない存在感がよかったんですよね~これからちょっと楽しみかも。そして一応ビートたけし主演ということですがみんなが主役と監督自身が言ってたとおりみんなに見せ場がちゃんとあってその力量には感心した。

特に今回はあのビートたけしが受けの立場に回るというのが新鮮でしたね。
今までの北野作品でのたけしさんは大体自ら能動的ではないけどいつの間にか先導しなければならないような形だったのが、今回は完全に受身の立場でしたからね。意外と受けの芝居のほうが難しいと思うので新たな役者北野武の新たな一面にビックリしたし戸惑いました。過去の作品だったら絶対今回のような終わり方はないのでね。

過去の北野作品だと終わった後の余韻が物凄くあったので今回もそれを少し期待してたのか終わった時あれれ?これで終わり?と思っちゃったんですが。こういう暴力映画て義理とか人情のために殺し合うことも致し方ないという風潮のものが多いけどこの映画は完全にみんな義理や人情なんて欠片もない、私利私欲に走る男たちの物語なので余韻なんて残るはずがない。残るとすれば人間の欲の深さほどバカなものはないてことでしょうか。これは私が女という立場だからこそ余計感じるのかもしれないけど、加瀬さんが舞台挨拶で女の人は男てバカだな~と思ってみてください。と言ってた言葉のとおりでしたね。

北野作品は一応全部見てるんですけどこの監督ほど死の匂いがぷんぷん漂うことてなかなかないと思うんだけど、それほど北野作品には死がつきまとっていて、死というゴールを目標に走ってる主人公が多かったのに、今回次々登場人物が死んでいくけど、みんな生への執着心があるのよね。そこが今までの北野作品とは一線を画するというか、やっぱり人間何かの欲を持ってるかぎりは生への執着につながるということなのかも。

加瀬さんが北野作品は行間を読み取るような映画と言ってたことに大きく同意するんだけど、これまでの北野作品は観客に想像してもらったり結末の判断を観客に委ねるものが多かった。そういう作品が多かったからこそフランスなどのヨーロッパ受けがよかったんだろうけど日本では観客が想像したり自分で解釈するよりもハッキリわかりやすいものが好まれる。だから北野作品の中ではわかりやすい「座頭市」が一番ヒットした。そういう状況に監督はもう日本人には今までの作風じゃ無理!て思ったのかも。ま、観客に寄っていくタイプの監督じゃないけど、観客の創造力の欠如がこの映画を生んだような気がするな~

でもそれは悲観的なことじゃなく監督自身が王道を撮ってみたかったて言っていたので王道も芸術性を持った映画もどっちも撮れる監督てなかなかいないのでそういう意味ではやっぱりすごいことなんだと思う。

今回の映画はエンターテイメントにこだわったと言ってる言葉のとおりの物だったけどこれからエンターテイメント性もあり芸術性もある作品ができればすごいかも。その時は加瀬さんもまた使ってください(笑)

まぁ確かに残虐ですよ。よくぞここまで痛め付けましたて感じですけど、私が見た残虐度ランキングではまだトップではないかな~一位は香港映画なんですけど人肉使ってラーメン作る話なんですけど(^o^;黒沢清監督の「蛇の道」も別の意味で怖いんですけど。残虐なんだけど漫画ぽいところもあり笑っちゃうところもあったんですよね。

最初のシーンの車の撮り方が見事だった。ただ北野監督て最後のほうが荒くなっちゃうのよね。ラストにむかって話を収めないといけないから怒涛のごとく話が進んで行くんだけど殺し方とかももう一捻り!と思っちゃったり。てかなり残酷なこと言っちゃってますが(笑)

加瀬さんはやっぱりいい役だったよね~あの顔でやくざですからね。そのギャップが映画の怖さにつながってたし、ここ最近ナチュラルな役が続いてたからこそここでこういう役を選んでくれた監督には感謝ですね。また出てほしいな~

水道橋博士が「ソナチネ」が芥川賞だとすれば「アウトしてレイジ」は直木賞だて言ってたんですけどまさにその通りだと思う。ソナチネの名ゼリフ「死ぬのを怖がってると死にたくなるんだよ」て台詞があるんですけどアウトレイジは死がゴールじゃない初めての北野作品かも。

北野監督も好きでそこに加瀬さんも出てるということでちょっとマニアックな話にまで及んでしまって多分見てない人にはなんのことやらて感じかも知れないけど、やっぱりもう一回見ないといけないかな~でも映画館そっち系のおっちゃんが多かったので2回目はきついな~(笑)

by inami4009 | 2010-07-09 00:49 | 加瀬亮